なぜ「輸入」と「販売」で許認可が別々になるのか

税関が見ているのは「持ち込んでよいか」だけ

まず、なぜこんな分かりにくい仕組みになっているのかを整理しておきましょう。
輸入時に税関が確認しているのは、あくまで「その貨物を日本国内に持ち込んでよいか」という点です。

販売段階では、別の法律が「消費者に渡してよいか」を見ている

一方、電気用品安全法・消費生活用製品安全法・食品衛生法・薬機法・酒税法といった法律の多くは、「国内の消費者に渡るときに安全か」を別の観点でチェックする仕組みを持っています。
そのため、通関の時点では問題がなくても、実際に店頭やネットショップで売り始める段階になって、別の許可・届出が必要だと分かるケースがあるのです。

品目別・必要になりやすい許認可チェックリスト

代表的な品目カテゴリと、販売段階で関わってくる法律・許認可を整理すると、次のようになります。自社の商品がどれかに当てはまりそうか、まずはざっと見比べてみてください。

商品カテゴリ関係する法律販売段階で必要になりやすいもの
電気製品(コンセント接続製品・バッテリー製品等)電気用品安全法(PSE)販売事業者は、正しいPSE表示が付されていることを確認したうえで販売する義務を負う
ライター・レーザーポインター等の指定製品消費生活用製品安全法(PSC)PSCマークが付された特定製品でなければ、製造・輸入・販売のいずれの事業者も販売できない
食品、食品用の器具・容器包装食品衛生法業種によって「営業許可」(保健所)または「営業届出」が必要
化粧品薬機法輸入だけでなく、販売のための「化粧品製造販売業許可」(都道府県薬務主管課)が別途必要
医療機器薬機法「高度管理医療機器等販売業・貸与業の許可」、または「管理医療機器」の届出が都道府県薬務所管課で必要
酒類酒税法販売場ごとに所轄税務署長の「酒類販売業免許」が必要

PSE・PSCは「表示があるかどうか」が販売段階の分かれ目

電気用品安全法では、実際に輸入する事業者が技術基準への適合確認や事業届出などの義務を負います。
一方、そこから仕入れて販売するだけの事業者にも、正しい表示(PSEマーク等)が付いた製品であることを確認したうえで販売する義務があります。経済産業省は、製造・輸入事業者向けとは別に「販売事業者ガイド」を用意しており、輸入する側と販売するだけの側とで、求められる役割が分かれていることがうかがえます。
消費生活用製品安全法(PSC)も考え方は似ていて、製造事業者・輸入事業者・販売事業者のいずれであっても、PSCマークが付された特定製品でなければ販売することはできません。

食品・化粧品・医療機器は「販売するための許可」が別に要る

食品衛生法は2021年6月の改正で、営業許可が必要な業種が34業種から32業種に再編され、許可業種・届出業種・届出対象外の3区分に整理されました。食品や食品用の器具・容器包装を扱う場合、業種によって保健所の許可または届出が必要です。
化粧品は、輸入した後に販売するためには「化粧品製造販売業許可」が都道府県の薬務主管課で別途必要です。医療機器も同様に、高度管理医療機器等であれば販売業・貸与業の許可、管理医療機器であれば届出が、都道府県の薬務所管課で必要になります。いずれも輸入そのものとは別の手続きです。

酒類は「誰に売るか」で必要な免許が変わる

酒類を輸入して国内で販売する場合、酒税法に基づき販売場ごとに所轄税務署長の販売業免許が必要です。
一般消費者や飲食店に販売するなら「一般酒類小売業免許」、2都道府県以上にまたがる通信販売なら「通信販売酒類小売業免許」、酒販店など他の酒類販売業者に卸すなら「輸入酒類卸売業免許」というように、販売先によって必要な免許の種類が変わります。

「新品だから大丈夫」の思い込みに要注意——古物営業法の意外な対象

もう一つ、見落とされがちなポイントがあります。
海外から新品を仕入れて販売するだけであれば、基本的に古物商許可は必要ありません。実際、海外で買い付けた雑貨を自分で日本国内で売るだけの場合も、古物商許可は不要とされています。

注意:「新古品」は古物営業法上の「古物」に該当

古物営業法では「一度も使用されていない物品」であっても、一度取引された(人の手に渡った)ものは「古物」に該当するとされています。いわゆる新古品(未使用未開封だが、一度消費者の手に渡った品)を仕入れて販売する場合は、古物商許可が必要になることがあります。国内の別の輸入業者が輸入した中古品を、その業者から買い取って販売する場合も対象です。

「新品を扱っているから関係ない」と思い込まず、仕入れルートが本当に「未使用・未流通」と言えるかどうかを確認しておくと安心です。

許可取得には時間がかかることも——輸入のスケジュールと並行して動く

化粧品の製造販売業許可や、酒類の販売業免許のように、審査に一定の期間がかかる許可もあります。
「輸入の手配が終わってから販売許可の準備を始める」という順番だと、貨物は届いているのに販売できない、という空白期間が発生しかねません。
自社の商品がどの許認可の対象になりそうかを早い段階で洗い出し、輸入のスケジュールと並行して許可の準備を進めておくと、貨物到着と同時に販売を始めやすくなります。

よくある質問

Q. 自分が輸入した商品なら、届出は輸入時に済んでいるのでは?
製品カテゴリによります。電気用品安全法や消費生活用製品安全法では、輸入する事業者自身が届出や技術基準適合の確認を行う義務を負っているケースが多いですが、化粧品や医療機器、食品、酒類では、輸入とは別に「販売のための許可・届出」を用意する必要があります。自社が輸入者と販売者を兼ねている場合は、両方の義務を意識しておく必要があります。
Q. どこに確認すればいいか分からない場合は?
電気製品・消費生活用製品は経済産業省、食品は最寄りの保健所、化粧品・医療機器は都道府県の薬務主管課、酒類は所轄の税務署が、それぞれの許認可の窓口になります。まずは自社の商品がどのカテゴリに当てはまるかを整理してから、該当窓口に確認するのが近道です。
Q. 許可がまだ取れていない場合、輸入自体を止めた方がいいですか?
輸入手続きと販売許可の取得は、並行して進められることも多くあります。ただし、販売許可が下りる前に店頭やネットショップで販売してしまうと法令違反になるため、許可取得のスケジュールを事前に確認したうえで、輸入と販売開始のタイミングを調整することをおすすめします。
Q. 許可がなくても、在庫として保管しておくだけなら問題ないですか?
保管そのものと、実際に「販売」する行為は分けて考える必要があります。上記の許認可の多くは「販売する」段階に関わる規制のため、許可取得前に商品を輸入・保管しておくこと自体は、輸入時点の規制(他法令該当性など)さえクリアしていれば直ちに問題になるものではありません。ただし販売開始日は、許可が実際に下りる見込み日から逆算して決めるのが安全です。