そもそも「フリータイム」とは何か

船会社が無料で貸し出す猶予期間

デマレージ・ディテンションの仕組みを理解するには、まず「フリータイム」という考え方を押さえる必要があります。
フリータイムとは、船会社がコンテナを無料で貸し出し・保管してくれる猶予期間のことです。
この猶予期間内であれば追加料金なしで港に置いておいたり、引き取って使用したりできますが、この期間を超えると追加料金が発生します。

日数は船会社・コンテナ種別によって変わる

フリータイムの日数は一律ではなく、船会社・仕向地・コンテナの種類によって異なります。
ドライコンテナは比較的長く設定される一方、フラットラックやオープントップ、リーファー(冷凍・冷蔵)コンテナなどの特殊コンテナは短く設定される傾向があります。
契約するたびに「今回のフリータイムは何日か」を確認する必要があるということです。

フリータイムとは

⏳ 船会社がコンテナを無料で貸し出し・保管してくれる猶予期間。
🚢 日数は船会社・仕向地・コンテナ種別ごとに異なり、一律ではない。

デマレージとディテンションの違い

発生する場所とタイミングが違う

フリータイムを超えた場合に発生する追加料金が、デマレージとディテンションです。
名前は似ていますが、発生する「場所」と「タイミング」が異なります。

項目デマレージ(Demurrage)ディテンション(Detention)
日本語での呼び方超過保管料返却延滞料
発生する場所港のコンテナヤード(CY)港の外(納品先〜返却場所)
発生する条件フリータイムを超えても引き取らないフリータイムを超えても返却しない
起算のタイミングコンテナ陸揚げ・保管カウント開始時点からCYから搬出した日、または翌日から
課税区分✅ 非課税(保税地域内の保管費用)⚠️ 課税対象(国内で発生する費用)

つまり、「コンテナを港から引き取るまで」に発生する遅れがデマレージ、「引き取ったコンテナを返すまで」に発生する遅れがディテンションです。
整理すると、次のような流れになります。

flowchart LR
  A["⚓ コンテナが港に到着"] --> B{フリータイム内に引き取った?}
  B -->|Yes| C{フリータイム内に返却した?}
  B -->|No| D["⚠️ デマレージ発生"]
  C -->|Yes| E["✅ 追加費用なし"]
  C -->|No| F["⚠️ ディテンション発生"]

  classDef goal fill:#ecfdf5,stroke:#16a34a,color:#166534;
  classDef danger fill:#fef2f2,stroke:#ef4444,color:#991b1b;
  class E goal
  class D,F danger
        

課税区分やカウント方法にも違いがある

発生場所・タイミングのほかにも、実務上見落とされがちな違いがあります。

  • 課税区分が違うデマレージは保税地域内での保管費用という扱いのため消費税が非課税。ディテンションは国内で発生する費用のため課税対象になります
  • 土日祝日のカウント方法が変わる船会社や時期によって扱いが異なり、ゴールデンウィークや年末年始のような長期休暇をまたぐ場合は事前確認が必要です
  • 航空貨物は単位そのものが違う空港ごとに「到着日の翌日から24時間」のように、海上輸送より短い時間単位で猶予期間が設定されている例があります

誰が負担するのか

輸入者側が負担することが多いが、契約次第

見積書のどこにも載っていないこの費用、実際には誰が支払うことになるのでしょうか。
実務上は、フリータイムを超えてコンテナを引き取れない・返却できない状態を作っている輸入者(買主)側が負担することが多いとされています。
ただし、これはあくまで「多くの場合」の話であり、法律で一律に決まっているわけではありません。
契約条件によって負担者が変わりうるため、誰が支払うのかを契約段階で明確にしておくことが実務上重要です。

見落としがちなポイント

「遅延の原因を作った人」と「費用を負担する人」は必ずしも一致しません。
フォワーダー側の書類手配のミスで通関が遅れた場合でも、フリータイムの契約上は輸入者がデマレージを負担する立場になっている、ということが起こり得ます。
インコタームズ自体は「どこまでの輸送費・通関費を誰が持つか」を定めるものであり、フリータイムを超過した場合の追加料金の負担まで明示的に規定しているわけではありません。

インコタームズによって管理のしやすさが変わる

EXWやFOBのように、輸入者自身が国際輸送・国内通関の手配に深く関わる条件では、フリータイムの管理も輸入者側の目が届きやすく、この記事で紹介する対策を自社の判断で実行しやすいという利点があります。
一方、CIFやDDPのように、輸送・通関の手配の多くを売主側やそのフォワーダーが担う条件では、フリータイムの進捗状況が輸入者側から見えにくくなりがちです。
自社が主導権を持てない分、こまめな進捗確認を相手方に依頼する一手間がより重要になります。

👀 見えやすい EXW・FOB(自社で手配)
vs
🙈 見えにくい CIF・DDP(売主側が手配)

LCL(混載貨物)の場合は少し事情が違う

NVOCCが返却義務を負う

ここまではFCL(コンテナ1本を借り切る輸送)を前提に説明してきましたが、LCL(複数荷主の貨物を1本のコンテナに混載する輸送)の場合、事情が少し異なります。
LCL輸送では、コンテナの手配・返却義務を負うのはNVOCC(実運送者を利用して自らの名前で運送を引き受けるフォワーダー)です。
荷主はコンテナそのものを引き取るわけではなく、CFS(コンテナフレイトステーション)で仕分けられた自社の貨物だけを受け取る形になるため、FCLで問題になるようなデマレージ・ディテンションのリスクは、荷主には基本的に発生しません。

⚠️ 荷主が負う FCL(コンテナを直接借りる)
vs
🛡️ NVOCCが負う LCL(NVOCC経由で混載)

CFS保管料という形で費用が発生しうる

その代わりに問題になりやすいのが、CFSでの保管料です。
貨物の引き取りが遅れれば、CFSでの保管日数に応じた追加の保管料が発生します。

名前は違っても構造は同じ

📦 呼び方や請求の窓口は違っても、「引き取りが遅れると追加費用がかかる」という構造そのものは、FCLのデマレージと似ています。
🔍 自社の輸送がFCLかLCLかによって、注意すべき費用の名前と請求元が変わる、と理解しておくとよいでしょう。

保険ではカバーできないのか

貨物海上保険の対象外になりやすい

「貨物には海上保険をかけているから、デマレージやディテンションも保険でカバーされるのでは」と考える方もいますが、基本的にはそうなりません。
貨物海上保険は、輸送中の事故による貨物そのものの損傷・滅失を補償するための保険です。
デマレージ・ディテンションは貨物の損傷ではなく、コンテナの返却・引き取りの遅延に対する追加料金であるため、通常の貨物海上保険の補償対象には含まれない傾向があります。

⚠️ 貨物海上保険の対象外になりやすい

🚢💥 対象:輸送中の事故による貨物の損傷・滅失
🕒💸 対象外になりやすい:デマレージ・ディテンションのような遅延による追加料金

不可抗力の場合は個別確認が必要

一方、遅延の原因が台風・高潮・地震など、自社にもフォワーダーにも責任を問えない不可抗力による場合は、事情が異なることがあります。
準拠法や契約条件によっては、こうした不可抗力に起因するデマレージ・ディテンションについて、支払い義務が免除される可能性があるとされています。

🌀 不可抗力=自動的に免除ではない

免除の可否は契約内容や個別の状況に強く依存します。
実際に不可抗力によるトラブルに直面した場合は、自己判断で「払わなくてよいはずだ」と決めつけず、フォワーダーや専門家に確認することをおすすめします。

なぜ発生するのか、どう防ぐのか

発生原因を工程別に整理する

デマレージとディテンションが発生する原因は、発生する場所が違う分、それぞれ性質も異なります。

  • デマレージが発生しやすい原因輸入通関手続きの遅れ(書類準備不足、税関での追加確認等)、国内配送・倉庫業者の手配が船の到着に間に合っていない、関係者間の連絡不備でコンテナの到着情報が現場に伝わっていない
  • ディテンションが発生しやすい原因納品先での荷卸し作業に想定以上の時間がかかっている、コンテナの返却場所についての理解不足・確認不足、検品作業や分納対応で保持期間が延びている

共通しているのは、「船が着いてから」あるいは「コンテナを引き取ってから」慌てて動き出すと、フリータイムというタイムリミットに間に合わなくなりやすい、という点です。

防ぐための実務対策

対策の基本は、フリータイムという「時間との勝負」を、船が実際に到着する前から始めておくことに尽きます。

  • アライバルノーティス(到着案内)を受け取ったら、すぐに動く貨物が港へ着く前から荷受けの準備を進めておくと、フリータイム内に引き取りまで完了させやすくなります
  • 輸入許可に必要な書類を事前に整備しておくインボイス・パッキングリストの不備は税関での確認に時間を取られ、それだけでフリータイムを消費してしまいます
  • 国内配送・倉庫業者との調整を前倒しで行う船の到着予定日が確定した段階で、引き取り後の配送手配・受け入れ体制を先に固めておきます
  • フリータイムの起算日・カウント方法を都度確認する船会社・コンテナ種別ごとに異なり、土日祝日の扱いも変わるため、契約のたびに確認します
  • やむを得ず遅れが発生しそうな場合は、早めに船会社へ相談する正当な理由があれば延長や減免が認められるケースもあり、期限が過ぎる前の相談の方が通りやすくなります

フクミの輸入実務でも、フリータイムを超過した場合の保管料は、通常の概算見積には含めず、実際に発生した場合の実費精算として扱っています。
見積もり段階でこの費用を織り込むこと自体が難しく、だからこそ「発生させない工夫」の比重が大きくなるという考え方です。

よくある質問

Q. フリータイムの日数は、どこで確認できますか?
船会社やフォワーダーとの契約書類、B/L(船荷証券)、あるいは到着案内であるアライバルノーティスに記載されています。
船会社・仕向地・コンテナ種別によって条件が変わるため、案件ごとに確認する必要があります。
Q. LCL(混載貨物)でもデマレージは発生しますか?
LCL輸送ではコンテナの手配・返却義務をNVOCC(フォワーダー)が負うため、荷主にデマレージ・ディテンションが直接発生することは基本的にありません。
ただし、CFS(コンテナフレイトステーション)での貨物の引き取りが遅れると、CFS保管料という別の名目で類似の追加費用が発生することがあります。
Q. デマレージ・ディテンションは関税の一部として扱われますか?
いいえ、別物です。
関税は輸入時に国へ納める税金であるのに対し、デマレージ・ディテンションは船会社やフォワーダーに対して支払う運送関連の費用です。
ただし消費税の課税・非課税の扱いはデマレージとディテンションで異なる(デマレージは非課税、ディテンションは課税対象)ため、経理処理の際は区別して扱う必要があります。
Q. 台風や地震など、自社に責任のない理由で遅れた場合も支払わなければなりませんか?
契約の準拠法や条件によっては、不可抗力による遅延について支払い義務が免除される可能性があるとされています。
ただし、これは個別の契約内容に強く左右されるため、「不可抗力だから払わなくてよい」と自己判断せず、フォワーダーや専門家に確認することをおすすめします。