輸入の書類は、貨物が進む6つの場面ごとに決まった順番で登場する
まず、貨物の動きと書類の全体像をつかむ
船で届く貨物は、おおまかに次の6つの場面を順番にたどります。
それぞれの場面の下に書いたのが、その段階で登場する書類です。
- 1🏭 出荷前海外の工場・輸出者のもとで荷造りと書類作成インボイス(I/V)パッキングリスト(P/L)
- 2🚢 船積み・出港貨物を船会社に預ける船荷証券(B/L)
- 3🌊 海上輸送中貨物は海の上
- 4⚓ 日本に到着貨物はまず保税地域へ貨物到着案内(A/N)
- 5🛃 通関(税関の手続き)申告して、税金を納め、許可をもらう荷渡指図書(D/O)輸入申告書輸入許可書
- 6🚚 引取り・納品国内の貨物として受け取る
🚢 海外から船(コンテナ)で届く輸入を例にしています。
✈️ 航空便では、B/Lの代わりに「航空貨物運送状(Air Waybill)」が使われます。
⚖️ 書類の順番や受け渡しは、取引条件や支払い方法によって変わる場合があります。
場面と書類の対応表
6つの場面を、「どの書類が」「誰から」「何のために」という視点で並べると、次のようになります。
| 場面 | 登場する書類 | 主な出し手 | ひとことで言うと |
|---|---|---|---|
| ① 出荷前 | インボイス(I/V) パッキングリスト(P/L) | 海外の輸出者 | 荷物の中身と金額、箱ごとの明細を説明する書類 |
| ② 船積み・出港 | 船荷証券(B/L) | 船会社 | 貨物を受け取る権利を表す「引換券」 |
| ③ 日本に到着 | 貨物到着案内(A/N) | 船会社やフォワーダー | 「貨物が着きます」という到着の知らせ |
| ④ 引取りの準備 | 荷渡指図書(D/O) | 船会社など | 「この貨物を渡してよい」という引渡しの許可 |
| ⑤ 税関の手続き | 輸入(納税)申告書 輸入許可書 | 申告書は輸入者側(通関業者が代行) 許可書は税関 | 税関に申告し、許可をもらうための書類 |
| ⑥ 引取り | (許可を受けた状態で引取り) | — | 国内貨物として受け取る |
以下、場面ごとに「その書類は何で、なぜこのタイミングで出てくるのか」を見ていきます。
出荷前に用意されるインボイスとパッキングリストは、荷物の中身を説明する書類
インボイス:何がいくらで入っているかを示す
インボイス(I/V、仕入書)は、輸出者が発行する請求書兼商業送り状です。
品名・数量・価格・取引条件などが書かれており、「この荷物の中身はこれで、金額はいくらです」と説明する役割を持ちます。
税関への輸入申告でも、最初に挙げられる基本の書類です。
パッキングリスト:箱ごとの数量・重さ・大きさを示す
パッキングリスト(P/L)は、梱包ごとの数量・重量・サイズをまとめた箱の明細書です。
インボイスが「お金の側から見た中身」を示すのに対し、パッキングリストは「荷物の形から見た中身」を示す書類だと考えると分かりやすくなります。
この2枚は、あとの手続きでも繰り返し使われる
インボイスとパッキングリストは、出荷時に作られて終わりではありません。
後の通関では、申告の根拠となる書類として使われます。
そのため、2枚のあいだで数量・重量・金額に食い違いがないかを早めに確認しておくことが、実務では大切な作業になります。
船積みのあとに船会社が出す「B/L」は、貨物を受け取るための引換券
B/L(船荷証券)とは何か
B/L(Bill of Lading、船荷証券)は、貨物を預かった船会社が発行する書類です。
貨物を運ぶ契約の証拠であるとともに、貨物を請求できる権利を表す「有価証券」でもあります。
荷物を受け取る側にとっては、この書類が引取りに必要になります。
つまりB/Lは、お店の「商品引換券」のようなものだと考えると、イメージしやすくなります。
いつ発行されるのか
在来船の場合、B/Lは通常、貨物が実際に船へ積み込まれたあとに発行されます。
コンテナ船の場合は、コンテナ置き場(CY)などで貨物が受け渡されるため、「受取船荷証券」という書式が使われます。
いずれにしても、B/Lは貨物を船会社に預けたあと、輸送の途中までに発行される書類だと覚えておけば十分です。
B/Lの原本を使わない方法もある
B/Lは原本が手元に届かないと、船会社から貨物を引き取れません。
貨物がB/Lより先に着いてしまうと、その分だけ手続きが止まります。
こうした場合に備えて、次のような方法が知られています。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 海上運送状(Sea Waybill) | 最初からB/Lを使わず、輸入者が輸出者に発行を依頼する。有価証券ではないので、原本のやり取りが要らない |
| サレンダードB/L | 発行地でB/Lが船会社に回収され、「Surrendered」などの表示が付く。利用にはトラブル報告もあり注意が必要 |
| 銀行連帯保証状(L/G) | 銀行の保証付きの書類を船会社に差し入れ、B/Lなしで先に引き取る。B/Lが届いたら速やかに提出する |
日本に着く合図は「A/N」、ここから引取りの手続きが動き出す
A/N(貨物到着案内)は、船会社などから届く到着の知らせ
A/N(Arrival Notice、貨物到着案内書)は、貨物が日本に着いたときに、船会社やフォワーダーから荷受人(貨物を受け取る人)へ届く知らせです。
通常は、貨物の搬入先などが書かれています。
この書類を受け取ったところから、貨物を引き取るための具体的な手続きが動き出します。
貨物は、まず「保税地域」に置かれる
日本に着いた貨物は、そのまま自由に持ち出せるわけではありません。
原則として、まず「保税地域」という税関の管理下にある場所に運び込まれます。
保税地域とは、輸入の許可が下りる前の貨物を、関税や消費税を後回しにしたまま置いておける場所のことです。
輸入の申告は、原則としてこの保税地域に貨物が入ったあとに行います。
B/Lと引き換えに受け取る「D/O」は、船会社の引渡し許可
D/O(荷渡指図書)とは何か
D/O(Delivery Order、荷渡指図書)は、船会社などが発行する「この貨物を引き渡してよい」という指示書です。
輸入の実務では、B/Lと引き換えに受け取るのが基本です。
B/Lが「引換券」なら、D/Oはその券と交換でもらう「実際に荷物を渡してよい」という許可証にあたります。
書類の流れを一本の線で見る
ここまでの書類の受け渡しを、順番に並べるとこうなります。
B/Lを起点に、A/N、D/O、そして税関の許可へと、1枚の書類が次の手続きにつながっていく形になっています。
flowchart TD
A["📜 B/L:船会社が発行"] --> B["📩 A/N:到着の知らせ"]
B --> C["🔁 D/O:B/Lと交換"]
C --> D["🛃 輸入申告:税金を納付"]
D --> E["✅ 輸入許可書:税関が発行"]
classDef goal fill:#ecfdf5,stroke:#16a34a,color:#166534;
class E goal
通関では、申告書・提出書類・輸入許可書の3つが順に登場する
- 1通関業者が税関へ申告する通常は電子システム(NACCS)で、必要書類とあわせて提出輸入(納税)申告書インボイスB/Lなど
- 2税関が審査・検査する書類を確認し、必要に応じて貨物を検査
- 3関税・消費税を納付する納付が確認されると許可へ進む
- 4輸入が許可されるここで初めて国内に持ち出せる状態に輸入許可書
- 5保税地域から引き取る国内の貨物として受け取る
輸入申告書:通関業者が税関へ提出する
輸入申告書は、「この貨物を輸入します」と税関へ伝えるための書類です。
実際には、貨物のある保税地域を管轄する税関に対して、通関業者が申告書と必要書類を提出するのが一般的な流れです。
通常は、電子システム「NACCS」を使ったオンライン申告で行われます。
申告のときに必要になる書類
税関が示している、輸入申告のときに必要な書類は次の通りです。
ここまでに出てきた書類が、ここで一斉に使われることが分かります。
- 仕入書(インボイス)品名・数量・価格などが書かれた書類
- 船荷証券(B/L)または海上運送状航空貨物の場合は、航空貨物運送状(Air Waybill)
- 運賃明細書・保険料明細書・契約書運送や保険にかかった費用、取引の契約内容がわかる書類
- 必要な場合のみ:他の法律の許可・承認を証明する書類、原産地証明書品目によっては、別の法律の許可が必要になったり、協定による低い税率を使うために原産地証明書が必要になったりする
輸入許可書:これが出て初めて、貨物を持ち出せる
税関は、書類を審査し、必要に応じて貨物を検査します。
そして関税と消費税が納付されたことを確認すると、輸入を許可します。
この許可を受けて初めて、貨物は保税地域から国内の貨物として引き取れる状態になります。
許可前に引き取りたい場合に使える制度(担保を提供する「輸入許可前引取承認」など)もありますが、例外的な扱いです。
貨物の「いまの居場所」から見ると、必要な書類を逆引きできる
ここまでは、書類を軸に順番を見てきました。
最後に、視点を貨物の側に切り替えてみましょう。
輸入の途中で、貨物の居場所は5回変わります。
居場所ごとに「次へ動かすために必要な書類」が決まっているので、貨物がいまどこにあるかが分かれば、いま必要な書類も分かります。
貨物の居場所は5か所、それぞれに次へ進むための条件がある
| 貨物の居場所 | 貨物の状態 | 手元で必要な書類 | 次の居場所へ進む条件 |
|---|---|---|---|
| ① 出荷前 | 輸出者の手元にある | インボイス、パッキングリスト | 貨物を船会社に預け、B/Lが発行される |
| ② 船の上 | 船会社が運んでいる | B/L(引換券。届き方は取引条件で変わる) | 日本の港に着き、A/Nが届く |
| ③ 日本の港 | 船から降ろす前後 | A/N、D/O | B/Lと引き換えにD/Oを受け取り、保税地域へ搬入する |
| ④ 保税地域 | 税関の管理下にあり、輸入許可はまだ | 申告書類一式(インボイス、B/L、運賃明細書など) | 申告・審査・納付を経て、輸入許可を受ける |
| ⑤ 国内 | 国内の貨物として引き取る | 輸入許可書(引取りの際に示す) | 納品へ |
貨物が越える関門は2つ、どちらも書類が通行証になる
貨物が自由に動けなくなる「関門」は、大きく2つです。
1つ目は、船から降ろして保税地域へ入れるときで、ここではD/Oが必要です。
2つ目は、保税地域から国内へ出すときで、ここでは輸入許可書が必要です。
書類の名前を覚えるより、貨物がいまどの関門の手前にいるかを考える方が、必要な書類を思い出しやすくなります。
順番を知っていると避けられる、3つのつまずき
書類の「順番」が分かっていれば、止まる場所が予想できる
ここまでの順番を踏まえると、実務で手続きが止まりやすい場所も見えてきます。
代表的なものを3つ挙げます。
- B/Lの原本が貨物より遅れるB/Lがないと、D/Oに交換できず引取りが進まない。海上運送状やL/Gなどの代替手段を、早めに検討する
- 他の法律の許可証が通関に間に合わない輸入に別の法律の許可や承認が必要な品目では、その許可を証明する書類を申告のときに提出する。早めに確認しておく
- 貨物が保税地域に長く置かれる港に決められた無料の保管期間を過ぎると、超過保管料(デマレージ)がかかる。書類の手配と通関は並行して進めたい
よくある質問
Q. 航空便の場合も、同じ書類が出てきますか?
航空貨物運送状は海上運送状と同様の性質のもので、荷受人が貨物を引き取るときに提示する運送契約書として作成されます。
また、航空便では貨物が空港の貨物ターミナルに運び込まれ、到着の連絡が電話で来るケースもあります。
Q. 通関業者に頼めば、書類は自分で用意しなくていいですか?
ただし、申告のもとになるインボイスなどの書類は、輸出者から輸入者のもとに届くものです。
書類が揃っているか、内容に食い違いがないかは、依頼する前の段階で確認しておくと安心です。
Q. 書類が出てくる順番は、いつも同じですか?
たとえば、荷為替手形による決済では、銀行を通じて船積書類を入手する流れになります。
自分の取引でどうなるかは、輸出者や取引銀行、依頼する業者に確認してください。
Q. 輸入許可が下りる前に、貨物を引き取る方法はありますか?
ただし、通常の流れの例外にあたる制度です。
対象になるかどうかは、税関や通関業者に確認が必要です。