航空便には「容積重量」という落とし穴がある

実重量だけでは決まらない

まず知っておきたいのが、航空貨物の運賃は「実重量」だけでは決まらないという点です。
航空貨物の運賃は、実重量と「容積重量」のうち、大きい方が適用されます。
容積重量は「縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)×個数÷6,000」という式で計算されるのが一般的です(国際航空運送協会=IATAの基準に基づくもので、フォワーダーによっては5,000で計算する場合もあります)。

具体例で見ると

例:50cm角の箱10個、実重量100kgの場合(説明のための一般化した例です)
100kg 実重量
<
約208kg 容積重量(50×50×50×10÷6,000)

容積重量の方が大きいため、運賃はこの約208kg分で計算されることになります。

軽いけれどかさばる商品(発泡スチロールを使った緩衝材の多い商品など)を送る場合、実重量では大した金額に見えなくても、容積重量で計算し直すと請求重量が跳ね上がることがあります。
「軽いから航空便でも安いはず」という思い込みが、見積もりの段階で裏切られるパターンです。

海上便(LCL)にも似たような換算がある

「W/M」という考え方

同じような仕組みは、実は海上輸送の混載便(LCL)にもあります。
LCL運賃では、「1CBM(立方メートル)=1,000kg(1トン)」という基準で、実重量とCBM換算重量のうち大きい方を運賃計算に使う「W/M(Weight or Measurement)」という方式が使われます。

具体例で見ると

例:1CBMの箱に実重量300kgを詰めた場合(説明のための一般化した例です)
300kg 実重量
<
1,000kg CBM換算(1CBM=1,000kg)

CBM換算の方が大きいため、実重量300kgではなく1,000kg分の運賃が適用されることになります。

つまり、実重量が軽くてもかさばる荷物は、海上便でも容積基準で運賃が計算されてしまうということです。
船便だから安心、航空便だから高い、と単純に決めつけず、自社の商品が「重い割に小さいのか」「軽い割にかさばるのか」を先に確認しておくことが大切です。

項目海上輸送(船便)航空輸送(航空便)
運賃の傾向比較的安い比較的高い
日数の傾向長い短い
向いている貨物大ロット・重量物小口・軽量・急ぎ
運賃計算の基準実重量とCBM換算重量(1CBM=1,000kg)のうち大きい方実重量と容積重量(縦×横×高さ÷6,000)のうち大きい方

運賃がどちらの基準で決まるかを整理すると、次のような流れになります。

flowchart LR
  A[貨物の実重量とサイズ] --> B[容積重量 or CBM換算を計算]
  A --> C[実重量]
  B --> D{どちらが大きい?}
  C --> D
  D -->|容積重量/CBM換算が大きい| E[その数値で運賃確定]
  D -->|実重量が大きい| F[実重量で運賃確定]

  classDef goal fill:#ecfdf5,stroke:#16a34a,color:#166534;
  class E,F goal
        

「45〜100kgが分岐点」はあくまで目安

目安として言われている数字

海上輸送(LCL)と航空輸送のコスト分岐点は、貨物の重量でおおよそ45kg〜100kgあたりと言われることがあります。

分岐点の目安

実重量にして45kg〜100kg前後が、海上と航空のどちらが安くなりやすいかの境目として語られることが多い数字です。
ただし、これはあくまで目安であり、絶対的な基準ではありません。

目安だけに頼らない

航路・時期・フォワーダーによって運賃は変わるため、実際にどちらが得かは、都度両方の見積もりを取って比較することが確実です。
「前回はこっちが安かったから」という判断だけに頼らないようにしましょう。

運賃以外にも見落とされがちな費用がある

運賃そのものの比較だけでなく、船便・航空便にはそれぞれ、運賃とは別に請求される費用があります。

  • THC(ターミナル・ハンドリング・チャージ)港湾・空港のターミナルで、コンテナや貨物の積み下ろし・保管・税関への届け出作業などをまとめた料金です
  • CFSチャージ(LCL特有)海上混載便(LCL)では、コンテナ・フレート・ステーション(CFS)で貨物をコンテナに積み込む(バンニング)・取り出す(デバンニング)作業を含む取扱料金が発生します。航空便には同じ形の費用はなく、空港でのハンドリング費用にまとめて含まれるのが一般的です
  • BAF・CAF(燃料油・為替サーチャージ)基本運賃とは別に、燃料価格の変動に応じて調整されるBAF、為替レートの変動に応じて調整されるCAFが上乗せされることがあります。船社によっては運賃込みで提示される場合もあります

これらの費用は、運賃そのものの比較だけでは見えてこないため、見積もりを取る際は「運賃以外にどんな費用がかかるか」を内訳ベースで確認しておくことをおすすめします。

運賃だけでなく「在庫コスト」まで含めて考える

運賃の比較だけでは見えないもの

もう一つ見落とされがちなのが、運賃の比較だけでは輸送手段の本当の損得は分からない、という点です。
倉庫スペースのコストが高い場合や、在庫量そのものを減らしたい場合には、運賃が高くても航空輸送の方が有利になることがあります。
航空便は定期的なフライトスケジュールで、必要なタイミングに近い形で商品を受け入れやすいため、その分だけ保有する在庫を減らせる可能性があるからです。

比較の視点を広げる

比較の視点見えるもの
運賃だけで比較単価の差だけ
総保有コストで比較運賃+在庫費用+欠品による機会損失

運賃の差額だけを見るのではなく、削減できる在庫費用や、欠品によって失う可能性のある販売機会まで含めて比較すると、見え方が変わることがあります。

リードタイムは「平均日数」だけで判断しない

同じ「平均20日」でも中身が違う

リードタイムを検討するときも、「通常20日」のような平均値だけで判断しないことが重要です。
同じ「平均20日」でも、毎回安定して20日前後で届くのか、状況によって大きく前後することがあるのかによって、必要な安全在庫の量や生産計画の組み方が変わってきます。

例:どちらも「平均20日」の場合(説明のための一般化した例です)
20日前後 安定型(振れ幅が小さい)
vs
10〜40日 変動型(振れ幅が大きい)

振れ幅が大きい場合は、その分だけ多めの安全在庫を見込んでおく必要があります。

見積もり時に振れ幅も確認する

見積もり時には、平均日数だけでなく、遅延の振れ幅についても確認しておくと安心です。

見積もりを取るときに確認しておきたいこと

運賃だけを見て判断しないためには、見積もりを依頼する段階で次の項目を確認しておくと、あとから想定外の請求に驚かずに済みます。

  • 貨物の実重量とサイズ(縦・横・高さ)容積重量・CBM換算のどちらでも必要になる基本情報です
  • 容積重量の計算基準(6,000か5,000か)フォワーダーによって異なることがあるため、事前に確認しておきます
  • 梱包後の最終サイズ緩衝材や外箱を含めた実際に運ぶ状態のサイズで計算されるため、商品そのもののサイズだけで見積もらないようにします
  • 航路・時期による運賃の変動幅同じ区間でも時期によって運賃が変わることがあるため、都度見積もりを取ります
  • リードタイムの振れ幅平均日数だけでなく、遅延した場合にどの程度ずれる可能性があるかも聞いておきます

よくある質問

Q. 容積重量の計算に使う「6,000」という数字に例外はありますか?
フォワーダーや航空会社によっては5,000を基準にする場合もあります。
見積もりを取る際に、どちらの基準で計算されているかを確認しておくと、想定外の請求を防げます。
Q. 少量の貨物なら、迷わず航空便でいいですか?
小口・軽量・急ぎの貨物は航空便が向いている傾向にありますが、容積重量の計算次第では想定より高くなることもあります。
数量・サイズ・重量が分かった時点で、両方の見積もりを取って比較するのが確実です。
Q. 船便と航空便を混ぜて使うことはできますか?
急ぎの一部だけを航空便で送り、残りを船便で送るという使い分けは実務でもよく行われます。
納期と在庫コストのバランスを見ながら、貨物を分けて手配することも選択肢に入れておくとよいでしょう。
Q. 容積重量やCBM換算は、誰が計算してくれるのですか?
通常はフォワーダーが見積もり時に計算して提示してくれますが、計算の基準(6,000か5,000か、梱包後のサイズかどうか)によって金額が変わります。
提示された数字をそのまま受け取るのではなく、どう計算されたかを一度確認しておくと、後から金額の根拠を説明できずに困ることを防げます。