輸入は「モノ・カネ・カミ」の3つが並行して動く取引
貨物・代金・書類の3つに分けて考える
貿易取引には3つの流れがあります。
貨物(モノ)、代金(カネ)、書類・情報(カミ)の移動です。
これらは売買契約の条件にもとづいて、売り手と買い手が関係者の協力を得ながら進めていきます。
| 流れ | 動くもの | 向き | 関わる仕組み |
|---|---|---|---|
| 📦 モノ | 貨物 | 輸出者 → 輸入者 | 運送、保険 |
| 💴 カネ | 代金 | 買い手 → 売り手 | 外国為替 |
| 📜 カミ | 書類・情報 | 売り手・買い手・関係者の間 | 契約、各種の手続き |
モノとカネは一方向、カミは何度も行き来する
モノとカネは、基本的に一方向に1回流れます。
これに対してカミは、取引の交渉を始める前から取引が終わるまで、関係者の間を多方向に何度も流れます。
そのため、カミの流れを理解することが貿易実務の基本だといわれます。
3つの流れは、別々の相手と、別々のタイミングで進みます。
貨物は着いたのに書類が届いていない、書類はあるのに支払いが済んでいない、という状態が「ズレ」です。
輸入の現場では、この3つがどこかでズレないように調整することが、担当者の大切な役割になります。
モノの流れ:貨物は保税地域と輸入許可を通って輸入者に届く
日本に着いた貨物は、許可が出るまで保税地域に置かれる
船や飛行機で日本に着いた外国の貨物は、輸入の手続きが終わるまでの間、保税地域に置かれます。
輸入の申告も、原則として貨物が保税地域に入ったあとに行います。
税関の審査や必要な検査を受け、関税と消費税を納めると輸入許可書が出て、貨物を国内の貨物として引き取れるようになります。
保税地域の種類や、許可前に貨物を動かせない理由は、保税地域の記事で詳しく説明しています。
モノの流れは、書類がそろわないと先へ進めない
貨物の流れには、ところどころに「関門」があります。
船会社から貨物を受け取るには、B/L(船荷証券)の原本が必要です。
貨物が日本に着いていても、B/Lの原本がなければ引き取れません。
保税地域から出すには、税関の輸入許可が必要です。
つまり、モノの流れは、カミがそろわないと先へ進めません。
カネの流れ:輸入者が払うお金には、行き先が3つある
商品の代金・運賃などの費用・税金の3つに分けて考える
「カネ」というと商品の代金を思い浮かべがちですが、輸入者が払うお金には、ほかにも行き先があります。
大きく分けると次の3つです。
- 商品の代金(輸出者へ)売買契約で決めた金額を、決めた方法で支払う
- 運賃・保険料などの費用どこまでを売り手が払い、どこからを買い手が払うかは、取引条件(インコタームズ)で変わる
- 関税・消費税(税関へ)輸入の許可を受ける前に納める
取引条件が変わると、輸入者が払う範囲も変わる
EXW(工場渡し)では、物品が引き渡されてから自国に持ち込むまでの輸出入の通関手続きや諸費用、輸送費、関税などを買い手が負担します。
一方、CIFでは、売り手が船積みまでの費用と、指定した仕向港まで運ぶための運賃などを負担します。
ただしCIFでも、到着した港でのターミナル費用(THC)が運送契約に含まれていない場合は、結果的に買い手の負担になることがほとんどです。
取引条件ごとの違いは、インコタームズの記事で詳しく説明しています。
代金の払い方によって、書類を受け取るタイミングが変わる
商品の代金の払い方には、いくつかの種類があります。
主なものを整理すると、次の通りです。
どれを選ぶかで、お金を払うタイミングと、書類を受け取るタイミングの関係が変わります。
| 払い方 | しくみ | カネとカミの関係 |
|---|---|---|
| 前払い(送金) | 商品が届く前に代金を送る | 支払いが先。輸入者は、商品を確実に受け取れるかどうかのリスクを負う |
| 信用状(L/C) | 輸入者の取引銀行が、輸出者への支払いを約束する | 銀行に届いた船積書類と引き換えに、輸入者が代金を払う |
| D/P(信用状なしの荷為替手形) | 支払渡し | 代金を払うと引き換えに、船積書類を受け取る |
| D/A(信用状なしの荷為替手形) | 引受渡し | 手形の引受け(支払いの約束)と引き換えに、船積書類を受け取る |
| 後払い(送金) | 商品の発送後に代金を送る | 輸出者にとって代金回収のリスクが高い方法とされる |
カミの流れ:書類は、代金と貨物をつなぐ「結び目」になる
結び目①:代金を払うと、船積書類が手に入る
荷為替手形で決済する場合(L/C・D/P・D/A)、輸入者は、手形の引受けや代金の支払いと引き換えに、銀行からB/Lなどの船積書類一式を受け取ります。
ここが、カネとカミが交換される最初の結び目です。
支払いが済まなければ、書類は手に入りません。
結び目②:書類と引き換えに、貨物が動く
受け取ったB/Lは、輸入者が裏書きをして海貨業者(いわゆる乙仲)に渡します。
海貨業者はB/Lを船会社に示し、B/Lと引き換えにD/O(荷渡指図書)を受け取ります。
そしてD/Oと引き換えに本船から貨物を引き取り、保税地域に運び入れます。
ここが、カミとモノが交換される結び目です。
結び目③:税金を納めると、輸入許可書が出る
最後の結び目は税関です。
輸入申告の書類を出し、必要な審査や検査を受けて関税と消費税を納めると、輸入許可書が出ます。
この許可があって初めて、貨物は保税地域から国内へ出せます。
ここでは、カネ(税金)とカミ(申告と許可)の両方がそろうことで、モノが先へ進みます。
それぞれの書類が貨物のどの段階で出てくるかは、輸入書類が出てくるタイミングの記事で時系列にまとめています。
【逆引き】止まったら、3つのどれが止まったかを見る
症状から、止まっている流れを逆引きする
手続きが進まないときは、いま起きていることから、3つのうちどれが止まっているのかを考えると、確認する相手と中身が見えてきます。
ここまでの内容を、症状から引ける表にまとめました。
| いま起きていること | 止まっている流れ | 確認すること |
|---|---|---|
| 貨物は日本に着いたのに、引き取れない | 📜 カミ(B/Lの原本がない) | B/Lがいまどこにあるか。本船が着いているのに、B/Lが銀行に届いていないこともある |
| 銀行から船積書類を受け取れない | 💴 カネ(支払い・引受けが済んでいない) | L/C・D/P・D/Aの条件どおりに、支払いや手形の引受けを済ませたか |
| 輸入申告をしたのに、許可が出ない | 📜 カミ(申告の書類)または 💴 カネ(税金) | インボイスやB/Lなどの必要書類、品目によって必要な他の法令の許可書類がそろっているか。関税・消費税を納めたか |
| 代金を前払いしたのに、貨物が届かない | 📦 モノ(出荷・輸送) | 出荷されたか、貨物がいまどこにあるか。前払いは、輸入者が商品を受け取れるかどうかのリスクを負う方法 |
止まった流れを、順に確かめる
表の内容を、確かめる順番の形にすると次のようになります。
まず貨物の居場所、次に書類、最後にお金の順に見ていくと、止まっている流れを切り分けやすくなります。
flowchart TD
A[手続きが止まった] --> B{貨物は日本に着いている?}
B -- いいえ --> C[モノを確認:出荷と輸送の状況]
B -- はい --> D{必要な書類はそろっている?}
D -- いいえ --> E[カミを確認:B/Lや申告の書類]
D -- はい --> F{代金と税金は払った?}
F -- いいえ --> G[カネを確認:支払い・引受け・納税]
F -- はい --> H[業者や税関に状況を確認]
B/Lより先に貨物が着いたときに使われる方法
「貨物は着いたのに、B/Lがない」は、カミがモノに追いつかない典型的なズレです。
こうしたときに使われる方法には、次のようなものがあります。
- 海上運送状(Sea Waybill)最初からB/Lを使わない方法。有価証券ではないため、原本をやり取りする必要がない
- サレンダードB/L船会社が発行地でB/Lを回収したもの。信用状統一規則に規定がなく、トラブルも報告されているため、使う場合は注意が必要
- 保証状(L/G)銀行の連帯保証がある保証状を船会社に差し入れ、B/Lなしで先に貨物を引き取る方法
L/Gを使うと、カミ(B/L)より先にモノを動かせます。
ただし、L/Gで貨物を引き取った場合、船積書類が届いたときに輸入者は代金の決済を必ず行う必要があり、支払いを拒むことはできません。
モノを先に動かした分、カネの側の選択肢がなくなる、と覚えておいてください。
よくある質問
Q. 航空便でも、同じ考え方でいいですか?
ただし、航空便ではB/Lの代わりに航空貨物運送状(Air Waybill)が使われます。
書類の名前と引き換えのしかたが変わる点に注意してください。
Q. 送金で支払う場合、書類はどうやって届きますか?
銀行が代金と書類を引き換える仕組みではないため、書類がいつ届くかは輸出者の送り方しだいです。
発注の前に、書類をいつ・どうやって送ってもらうのかを輸出者に確認しておくと安心です。
Q. 3つの流れのうち、どれから確認すればいいですか?
迷ったときは、どの書類が必要で、何と引き換えに手に入り、いま手元にそろっているかを確かめると、ほかの2つの流れの状況も見えてきます。
Q. 代行業者に頼めば、カネとカミは気にしなくていいですか?
ただし、取引条件や支払い方法を決めるのは、売買契約の当事者である輸入者自身です。
また、輸入に必要な確認の最終的な責任は、輸入する側にあります。
3つの流れの全体像を知っておくと、業者からの連絡の意味が分かり、判断も早くなります。