発注の前は、商品を変えられる最後のタイミング

商品を決める情報を集める 発注の前やり直せる 発注する貨物が動き出す 輸送海・空を移動 通関税関で審査 選べる手:多い 選べる手:少ない 発注前は「商品を変える・仕様を変える・取りやめる」ができる 発注後は、通関で問題が見つかっても取れる手が限られる
輸入の流れと、選べる手の多さ

発注後に問題が見つかると、選べる手が少ない

輸入の流れは、商品を決めて発注し、船や飛行機で運び、日本で通関して納品する、という順番です。
発注の前なら、商品を変える、仕様を変える、取りやめるといった選択ができます。
ところが発注して貨物が動き出したあとは、できることが急に減ります。

とくに通関の段階で問題が見つかると、手続きが止まり、積み戻しや廃棄になることもあります。
輸送費や商品代金は、すでに支払い済みか、支払う約束をしているころです。
だから、確認はお金が動く前にしておくのが基本です。

確認が必要なのは、品目ごとに関わる法令が違うから

輸入できる貨物には、関税法のほか、電波法・PSE法・薬機法・食品衛生法など、品目に応じた法令が関わります。
どの規制が適用されるか、そして関税の分類(HSコード)が何になるかは、製品の素材や用途で決まります。
つまり、商品の中身が分からないと、確認の出発点にも立てません。

確認する5つの項目

発注の前に確認する5つを、先に全体像として並べます。
この順番で進めると、手戻りが少なくなります。

  1. 1
    🔎 その商品は、日本へ輸入できるか他の法律の許可や承認が必要かを調べる所管官庁に確認
  2. 2
    🏷️ 関税の分類と、かかる税金の見当素材・用途からHSコードを決める税関の事前教示
  3. 3
    ⚖️ 数量・サイズ・重量船便か航空便かを決め、運賃の見積もりを取る輸送手段
  4. 4
    📄 書類と、海外とのやり取りの担当インボイスとパッキングリストを出してもらえるかI/VP/L
  5. 5
    🚚 納品先荷物の最後の行き先と、受け取れる体制国内配送
発注前に確認する5つ。①でだめなら、②以降は確認する意味がなくなる

5つの確認を、判断の流れで見る

5つの確認は、順番に進めると手戻りが少なくなります。
とくに最初の「輸入できるか」は、他の4つの確認の前提になります。

      flowchart TD
      A["🛍️ 商品を決める"] --> B{"① 他の法律の規制対象か"}
      B -- はい --> C["許可・承認を取る"]
      B -- いいえ --> D["② 関税の分類と税金を確認"]
      C --> D
      D --> E["③ 数量・サイズ・重量で輸送手段を決める"]
      E --> F["④ 書類と海外への連絡担当を決める"]
      F --> G["⑤ 納品先を決める"]
      G --> H["✅ 発注する"]

      classDef goal fill:#ecfdf5,stroke:#16a34a,color:#166534;
      class H goal
      
発注の前に、5つの確認を順番に済ませる

確認① 関税を払えば輸入できるわけではなく、他の法律の許可が必要な商品がある

🛍️ 商品素材・用途を整理 他の法律の規制対象か? いいえ 次の確認へ関税の分類と税金 はい 許可・承認を取り、輸入申告のときに証明する
確認①の判定フロー。許可の証明ができない貨物は通関できない

関税法以外の法令で、輸入が規制されている貨物がある

輸入では「関税を払えば入ってくる」と思われがちです。
しかし実際には、関税法以外の法令で輸入が規制されている貨物があります。
税関の案内によると、他の法令の許可や承認が必要な貨物は、その法令に基づく許可や承認を受けたうえで、輸入申告のときに証明しなければ通関できません。

つまり、許可が必要な商品を発注してしまうと、貨物が日本に着いても税関を通せなくなります。
先に出てきたとおり、そうなると積み戻しや廃棄になる可能性があります。

税関が挙げている、対象になる主な法令

税関は、他法令の例として次のようなものを挙げています。
自分の商品がどれかに当たりそうなら、発注の前に必ず確認してください。

法令所管の官公庁
外国為替及び外国貿易法経済産業省
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律厚生労働省
食品衛生法厚生労働省
植物防疫法、家畜伝染病予防法農林水産省
火薬類取締法、銃砲刀剣類所持等取締法警察庁
高圧ガス保安法経済産業省
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律経済産業省
酒税法(アルコール関係)国税庁

該当するかどうかは、所管の官公庁に聞く

自分の商品が上の法令に当たるかどうかは、所管の官公庁に確認します。
税関も、他法令への該当性は一覧に載っている所管官庁に問い合わせるよう案内しています。

官公庁や専門家に聞くときは、商品の写真・URL・素材・用途が必要になります。
これらは次の確認②でも使うので、発注前に手元へ集めておくと、あとの確認が一気に進みます。

📌 確認の責任は、輸入する側にある

輸入に必要な確認事項(法令・許可・認証・規制)の最終的な責任は、輸入する側にあります。
専門家や代行会社が助言してくれる場合でも、確実な情報が必要なときは、所管の官公庁へ直接確認してください。

確認② 税金の計算は、関税の分類(HSコード)を決めることから始まる

素材・用途商品の中身 関税の分類HSコード 税率が決まる課税価格に適用 関税税関へ納める 消費税など輸入申告とあわせて
商品の中身から分類が決まり、分類から税金の見当がつく

関税は「課税価格」を基準に計算される

関税は、原則として輸入貨物の価格または数量を基準にして課されます。
基準になる価格は「課税価格」と呼ばれます(税関カスタムスアンサー1104)。
輸入品には、関税のほかに消費税などの内国消費税もかかり、これは輸入申告とあわせて税関に申告します(同1701)。

どの税率が適用されるかは、商品がどの分類(HSコード)に当たるかで決まります。
そして分類は、前の章で見たとおり、素材や用途で決まります。
だから確認①で集めた商品の情報が、そのまま確認②の材料になります。

分類に迷ったら、税関の「事前教示制度」を使う

分類に自信がないまま発注すると、通関のときに想定と違う税率が適用される可能性があります。
そうなると、見積もりの段階で計算した総額が、実際とずれてしまいます。

税関には、輸入する前に分類などを照会できる「事前教示制度」があります。
対象は、関税分類(税番)、原産地、関税評価、減免税の4つです。
東京税関の案内によると、次のような扱いです。

項目内容
回答の期限税番・原産地・減免税は照会から30日以内、関税評価は90日以内
回答の効力回答書の内容は、同じ貨物の輸入通関や税関調査のときに、原則3年間尊重される
文書での照会確実な回答を得るために勧められている方法
口頭での照会電話や窓口でも聞けるが、通関のときの審査の対象にはならない

回答までに30日かかる場合があるため、発注の直前ではなく、少し余裕を持って照会するのが現実的です。
回答が得られれば、見積もりの金額に根拠を持たせることができます。

確認③ 数量・サイズ・重量の3つで、船便か航空便かが分かれる

🚢 船便(海上輸送) 向いている荷物大ロット・重量物・コンテナ 運賃安い 日数長い ✈️ 航空便(航空輸送) 向いている荷物小口・軽量・サンプル・急ぎ 運賃高い 日数短い
量と重さ、急ぎかどうかで輸送手段が決まる

3つの数字が、輸送手段と運賃の見積もりの材料になる

数量、サイズ、総重量は、船便にするか航空便にするかを決める材料です。
運賃の見積もりを取るときにも、この3つが必要になります。
数字が曖昧なままだと、業者からも見積もりが出てこないことがあります。

一般的な使い分けは、次の表のとおりです。

項目海上輸送(船便)航空輸送(航空便)
向いている荷物大ロット、重量物、コンテナ小口、軽量、サンプル品、急ぎ
運賃安い高い
日数長い短い

運賃だけで決めると、納期や追加費用で想定が外れることがあります。
くわしくは船便と航空便の選び方の記事にまとめています。

到着日は「予定」として扱う

輸送業者から出発予定日(ETD)と到着予定日(ETA)を伝えられても、それはあくまで予定であり、確約ではありません。
天候や港・空港の混雑で、前後することがあります。

社内や取引先に伝えるときは、「必ずこの日に届く」と言い切らず、前後する可能性があることを添えてください。
言い切ってしまうと、遅れたときに信頼を損ねるだけでなく、トラブルに発展するおそれがあります。

確認④ 書類は最初から揃うか、足りないとき誰が海外に連絡するかを決めておく

🧾 インボイス金額の側の明細 📦 パッキングリスト箱ごとの明細 出してもらえる? はい 発注へ進める内容の食い違いを確認 足りない 自分で連絡 or 代行に頼む
書類が出てくるかを、発注の前に確かめておく

輸入申告に必要になる書類

輸入申告には、書類が必要です。
税関の案内では、次のような書類が挙がっています。

  • 仕入書(インボイス)・梱包明細書品名・数量・金額と、梱包ごとの明細を示す書類(梱包明細書はパッキングリストのこと)
  • B/L(船荷証券)または海上運送状/航空の場合はAWB貨物を運ぶ契約と、受け取る権利を示す書類
  • 運賃明細書・保険料明細書・契約書費用の内訳や、取引の条件を示す書類
  • 必要に応じて追加される書類他の法令の許可・承認の証明、原産地証明書(特恵・協定の税率を使う場合など)

発注前の段階では、まずインボイスとパッキングリストを出してもらえるかを確認します。
この2つは、輸入書類のなかでも数量・重量・金額の食い違いが見つかりやすい書類です。
書類が出てくる順番や、それぞれの役割は、輸入書類が出てくるタイミングの記事に整理しています。

書類が足りないときの選択肢は2つ

海外のメーカーに追加の書類を頼む必要が出たとき、やり方は大きく2つあります。

やり方内容
自分で連絡する自社から海外メーカーに連絡して、書類をもらう
代行を頼む海外とのメールなどのやり取り(コレポン)を、輸入代行会社などに任せる

代行を頼む場合は、費用がかかるか、どこまで対応してもらえるかを、事前に取り決めておくと安心です(これは一般的な注意点であり、会社によって扱いは異なります)。
先に決めておかないと、いざ書類が足りなくなったときに、誰も連絡しないまま日数だけが過ぎてしまいます。

確認⑤ 納品先が決まっていないと、通関が終わっても荷物を動かせない

🚢 港に到着船から降ろす
→
🔒 保税地域税関の管理下
→
🛃 通関輸入許可を受ける
→
🚚 国内配送トラックを手配
→
🏠 納品先受け取れる体制
通関が終わったあとに、荷物を運ぶ先が決まっている必要がある

出荷先・納品先の住所は、国内配送の手配に必要

出荷先・納品先の住所は、国内の配送ルートを手配し、トラック便の見積もりを取るために必要です。
発注の前に、納品先の住所と、荷物を受け取れる体制(受け取れる曜日や時間、荷下ろしの方法など)を決めておきます。

荷物は意外に重く、大きいものです。
配送先の建物に、大型トラックが入れるか、荷下ろしの設備があるかも、事前に確認しておきたい点です。
受け取れる条件が合わないと、配送の手配をやり直すことになります。

納品先が決まらないと、保管料がかさむことがある

納品先が決まっていないと、通関が終わっても荷物を動かせません。
港や倉庫で荷物が止まっている間は、保管料やコンテナの延滞料がかかることがあります。
くわしい仕組みはデマレージ・ディテンションの記事で説明しています。

見積もりに出てこない費用になりやすい

保管料や延滞料は、見積書の段階では金額に入っていないことがあります。
納品先の確認は後回しにせず、発注の前に済ませておきましょう。

確認が難しいときは、迷っていることごとに聞く相手を変える

輸入規制は?許可が必要か 🏛️ 所管の官公庁法令ごとに窓口が違う 分類・税率は? 🛃 税関(事前教示) 輸送・書類は?運賃・日数・手配 🚢 通関業者・フォワーダーなど
迷っていることによって、聞く相手が変わる

5つの確認と、相談先の対応表

5つの確認のうち、自分で判断するのが難しいものは、次の窓口で確認します。
相談する前に、商品の写真・素材・用途・数量・重量をまとめておくと、話が早く進みます。

迷っていること聞く相手
商品が輸入規制に当たるか所管の官公庁(法令ごとに異なる)
関税の分類・原産地・税率税関(事前教示制度)
船便か航空便か、運賃・日数通関業者・フォワーダー・輸入代行会社
書類が足りないとき海外メーカー、またはコレポンの代行会社
納品先までの配送輸入代行会社・運送会社

「通関業者」「フォワーダー」「乙仲」という呼び名の違いが分かりにくいときは、乙仲の記事が参考になります。
誰に何を頼めるのかが分かると、相談の相手を間違えにくくなります。

よくある質問

① 輸入できる?まずここから ② 分類と税 ③〜⑤ 発注
確認は①から。①でだめなら、②以降を確認する意味がなくなる
Q. 少量のサンプルでも、発注前の確認は必要ですか?
必要です。
量が少なくても、規制の対象かどうかは商品の中身で決まります。
サンプル品だからといって、他の法令の確認が免除されるとは限りません(個別の扱いは所管の官公庁に確認してください)。
Q. 事前教示は、誰でも使えますか?
輸入しようとする人が照会できる制度です。
照会の様式や添付資料は、輸入する予定の税関で確認してください。
Q. 5つの確認は、どの順番でやればいいですか?
確認①(輸入できるか)から始めてください。
輸入できない商品なら、他の4つを確認しても意味がなくなるためです。
①が済んだら、②の分類は①で集めた商品の情報をそのまま使えるので、続けて進めると効率的です。
Q. 確認の結果は、記録しておいたほうがいいですか?
残しておくことをおすすめします。
官公庁や税関に確認した内容、事前教示の回答書、書類の有無は、あとで担当が変わったときや、問題が起きたときの根拠になります(一般的な実務上の勧めです)。